秋、大井川鐵道の日常と非日常


 第2橋梁に到着して僅か5分ほどで「いぶき501」牽引の1001レがやってきた。重々しい動力音を響かせて旧型客車を牽引する姿はいつかのローカル列車そのものと言った感じであろうか。


 この日の深夜にもう1両のSLが陸送されると両方のSLに故障箇所が発生するなど滅多な事がない限り電機牽引の列車にはお目にかかれないだろう。そうなるとかなり貴重な列車をフィルムに収める事が出来た。
 この日は客車5両であった。残る2両は福用の留置場所で静かに休んでいた。荷物室付きオハニ36が編成に組み込まれない列車も珍しかったのかも知れない。


 今夜の輸送に備えて車体と足回りを分離する作業がある。深夜の輸送であることから、昼過ぎからの作業であろうかと高をくくって大代川側線へ行ってみると既にその作業は終了し、車体は低床トレーラーに、車輪や小物類は20t積みのトラック2台に分散され積込みが終わっていた。今にも雨が降りだしそうな空の下、静かに輸送開始までの時間を過ごす。


 やがて車輪などを積んだトラックのエンジンがかかる。数分もしない間に動き出したトラックは家山へ向けて発車していった。どうやら深夜に輸送されるのは車体だけの様だ。
 新金谷に行ってみるとSLが観光バス留置場側の側線に留置されていた。SL列車の運休で乗車を諦めた親子が汽車の前で写真を撮っている。早く汽車に乗れると良いのだが...


 日が暮れるまでに車輪などを線路上に降ろすと聞いたのでその足で家山へ向かう事にした。途中、代行バスの連絡駅である横岡駅に寄ってみた。残念ながらここでの乗降は行われておらず、代行バスと列車の乗り継ぎ専用だと言う。土砂災害の復旧は来年3月頃が見込まれている、それまでの暫定的な乗降場ではあるが、地元の方々の便を考えて利用出来るようになれば良いのだが...
 代行バスは当初観光タイプの車が使用されていたが、秋の行楽シーズンに入り10月末を以って廃線となった日切線で使用されていた中型バスに変わった。それら3台の他に大鉄タクシー・静鉄ジャストラインの中型バスも使用され何とか急場を凌いでいる様子が伺えた。
 そして沿線には秋の味覚でもある「柿」が実っている。横岡駅付近にも降りだした雨にしっとりと濡れた柿があった。


 横岡駅には数人の職員が配置されていた。そこにいる人は大鐵の職員はおろか、写真の彼女の様にバスガイドさんをはじめ、大鉄タクシー・大鉄観光バスなど関係会社の職員も見られる。「誰もが何でもやる」という会社の姿勢が垣間見られる。
 ここでの業務は列車から代行バス・代行バスから列車への乗り継ぎ案内やホーム監視などが目的。そして列車の発車時刻になると踏切を手動扱いで閉鎖し列車を発車させる。その姿は真剣そのもの、列車でもバスでも安全を掌る仕事をこなしている姿は機械化が進む安全対策設備にはない人対人の信頼関係を感じる。


 安全確認後発車の合図を送る。先ほどまでの笑顔が一変して真剣な眼差しに変わる。大鐵の腕章をしていなければ職員とも判らないであろう職員の私服姿はお客の目線で見ると少々不安を感じざるを得ない。復旧まであと4ヶ月ほど、せめて鉄道職員の制服を着て対応出来ないものだろうか。


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