秋、大井川鐵道の日常と非日常


 平成15年11月5・6日の二日間、街宣車の連呼が響く選挙戦の真っ只中に大井川へ出掛けた。
本線の神尾付近で起こった土砂崩落事故から2ヶ月半、そろそろ紅葉が色付き始める奥大井渓谷の様子と平日の大井川、そして深夜に予定されている2両目のSL陸送の非日常な様子を見るのが目的である。毎度の如く深夜移動し早朝から沿線を動き回ってみた。


 5日早朝4列車が崎平駅を発車する。島田・金谷方面の高校への通学列車となるこの列車は千頭6:15発、遠方の学校に通う生徒達は大変だ。まだ薄暗い沿線に駅舎の白熱電灯がやけに明るく感じた。


 やっと肌寒く感じられる様になってきた昨今、子供達も半袖シャツから長袖、そして日々厚着になってゆく。雨が降りそうなこの日、雨傘を持って始発列車の到着を待つ子供達は寒いと言いつつも元気一杯にホームを駆け回っていた。


 井川線上り2番列車は接岨峡温泉方面から奥泉にある小学生の為の通学列車。10数人の子供達が下車した車内は老人が一人乗っているだけだった。朝の清々しい空気と車窓を眺めながら千頭まで一往復してみることにした。手動ドアから身を乗り出して乗降確認をする車窓、駅職員の発車合図を待って笛を鳴らす。3両編成にたった二人の乗客...ちょいと寂しいものがある。


 井川線の大半の客車は自社製造、川根両国車両区は自社車両メーカーでもある。井川線下り始発列車は8:45発、この列車には僅かながら新聞が載せられている。沿線住民が新聞を目にするのはお昼が近くなった頃の事であろう。

 奥泉から千頭まで片道約30分、車利用なら10分ほどで着いてしまう距離を約3倍の時間を掛けて走る井川線。この路線が出来た経緯からこのスピードになったのは多くの方が知るところ。時速約17km、高速化が進む現代においてこの路線の速度は時代に逆行していると思われるだろう。だが時間に追われている現代、時間に「ゆとり」が感じられる列車があっても良いではないだろうか。井川線の風光明媚な沿線を眺めながらのんびりと時を過ごす。現代社会に忘れられているゆとりある時間の流れが今もなお流れている。

 下り始発列車で奥泉まで戻る事にしたが、改札で切符を購入しているとどうやらSLが運休になるような話をしている。機関車に不具合がでた様子だった。


 僅かながら色付いてきた山々にへばり付く様にして一気にコードを稼ぐアプト区間、その勾配は90‰で日本一を誇る。眼下を流れる大井川にその姿を映し力強く登ってゆく姿がみられる。


 列車は1時間強かけて接岨峡温泉駅に到着する。始発列車はここで終点の井川行きと折り返し千頭行きに分割される。折り返し時間待ちの間、ホームで記念撮影をする団体さん。車掌さんを捕まえてシャッターを押してもらう人もいた。車掌さん曰く「俺は車掌だよ、写真は別料金だからね」と。
 山郷の小さな駅に笑い声が響く。車内でも楽しい口調で場を盛り上げてきたに違いない。


 折り返し千頭行きとなる列車の機関士はエンジンルームの点検を始める。小型のディーゼル機関車とは言え山間部を駆ける兵、不測の事態があってからではどうしようもありません。日々の点検確認にも余念がありません。
 一方、団体さんの添乗員はカメラマン役を車掌さんに奪われてちょいと手持ち無沙汰。何故かカメラ目線な添乗員さん、顔を背ける様子もなかったのでカシャッと一枚、撮られなれてる??


 この接岨峡温泉で分割された折り返し列車だけが制御客車が付かない異例な列車となる。アプト区間開業前は機関車を先頭に客車が連なる姿が通常であったが、今その姿を見られるのはこの列車だけになってしまった。長島ダム駅で交換した列車の都合で短い列車にアプト式機関車が2両付く形となった。

 この後、千頭に戻りSL急行が本当に運休なのか確認をしに行った。そしたらなんと電気機関車で運転するとの回答、と言うよりも後20分ほどで千頭に到着する時刻。ならば!と、第2橋梁へ向かうことにした。


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