異電圧・異規格が存在する鉄路 箱根登山鉄道


 大平台に着くとホームに数人の作業員が待っていた。列車が去ると線路内に降りて作業を始める。訪問日の翌日から二日間の日程で箱根湯本〜強羅間を終日運休にして保線作業を行なう旨の通知が至る所で見られたが、その事前準備なのか先行作業なのか、メジャーでホームと線路の距離を測り、狂いが出ているところは人力によって微調整を行なっていた。


 その様子をホームから眺める乗客、普段は夜間などに行なわれ滅多に見ることのない保線作業に興味津々。正確に慎重に行なわれる作業の姿を見せる事は昨今の鉄道事故に不安を持つ人々に安心感を与えられるのではないだろうか。


 ほぼ20分おきに列車が着き、その度に作業員が退避する。下り強羅行きが登ってきたと思ったら上りの小田原行きがすぐさま入線する。時刻表上では同時刻に発車する事になっているが、その列車が同時入線することはなかなかない。巧く入ってきたら当たり!と思うほどだ。


 列車が発車するとすぐ、男達が動き出す。日が照っているとは言え山の中、ちょっとの風が吹けば身を縮めるほどの冷たさ。防寒着に身を包んだ作業員でも「寒い」を連発するほどであった。


 ポイント部分は一端掘り起こされて枕木・バラスト共に交換された。ツルハシを振るい突き固められる。機械のような一定のリズムはないが、人的に行なわれる作業は安心感がある。
 やがてやってきたのは箱根の登山電車と言えばこの車両と言えるモハ1型、傍らは登山線の近代化の先駆けとなった1000型ベルニナ号。モハ1型の無骨さが山男のそれならば、1000型のスマートな車体は何と表現したら良いだろうか。


 1000型の車端部のルーバーは冷房装置が搭載されている部分。屋根上は抵抗器床下は走行機器で目一杯の登山電車、冷房装置を搭載する場所がないため床上に機器を搭載している。その分、定員が減ってしまうのが玉に瑕だ。発車していくモハ1型は非冷房車、夏場は窓全開で心地よい箱根の山風を受けて走る。

 帰りの列車は大平台発車時点では最後部に陣取る。列車が行過ぎると作業員が線路端から姿を現し作業を始める。真新しいPC枕木の色が増えているのが良く判る。


 出山信号所で進行方向を変えて最前部になる。発車してすぐのところに勾配表があり、登坂側・降坂側共に80‰の標記がなされている。普通鉄道で粘着鉄道では日本最急勾配を誇る。(80‰とは1000m進むと80mの高さを登る勾配を示す。日本の普通鉄道最急勾配はアプト式を採用した大井川鐵道アプト市代〜長島ダム間の90‰)


 その後、吉原へ移動し少々構内入換えなどを撮影。岳南から着いたパワムを入換えるために稼働したDE10を鈴川踏切で撮る。この日は富士の毘沙門天祭最終日、踏切には参拝客が大勢待っている。

毘沙門天大祭


 その後ではガソリン専用タンク車を連ねてPFが前照灯を点して待機している。DEの入換え作業が終わったら発車するのかと思ったらなかなか発車しない。そして入換えするDEの脇を定期旅客列車が通過、毘沙門天祭りへ向う人々が待つ踏切を通過していく。


寒さに負けて撤収することに。いつまで経っても発車しない列車を間近で撮影して駅へ向った。この列車、何時頃発車したのだろう?


 帰りがけに沼津で途中下車。吉原へ向う車中から確認したシキ611が変圧器を載せた状態で止められていた。帰りにもあれば撮っていこうと思っていたが、まだ停車していた。どうやら夜間輸送されるみたいで、機関車の姿もなかった。


 新座ターミナル行きでしょうか?表には3日間かけて輸送されるような記載があった。何でも運ぶ「日通」、こんな重量物でも普段から運んでいるので手馴れているのでしょうね。この変圧器はどこから積載したのか...とても気になるものです。

 こちらも発車がいつか判らないので撮るだけ撮って撤収。この日は一日中寒さとの戦いであった。


                                     

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