箱 根 山 の 紫 陽 花 夜 曲


 宮ノ下に着くと上りの「あじさい号」が停車していた。上下列車共に宮ノ下駅に10分程度の停車時間が設けられてあり、構内のライトアップされた場所で各々撮影を行なっていた。また、列車の前では、乗務員が気さくに撮影に応じ、制帽の貸し出しも行なっていた。


まもなく発車と言う車内、紫陽花の装飾に浴衣が情緒を誘う、紙コップの中には生ビールが注がれていることだろう。


レールの軋む音・重々しい動力音が聞こえ、オデコ一灯の前照灯が顔を覗かせる。時間を追うごとに霧が濃くなってゆく。


 再び「あじさい号」が着くと構内が人であふれる。普段立ち入る事の出来ない線路内を我が物顔で歩ける。そしてまた記念撮影や紫陽花の撮影が行なわれる。我先にと見頃を迎えた株を見つけては写真を撮っていた。


 10分ほどの停車時間もアッと言う間に過ぎ列車に戻ると車内灯が落とされゆっくりと走り出す。白色灯以外にカラー灯も照らされており、山中の小駅とは思えないほどの華々しさがある。


下り2本目の「あじさい号」が到着、この頃になると一寸先は霧で真っ白、照明代わりに点けられた前照灯の光線が霧雨に映える。


 「あじさい号」発車後に続行でやってきた普通列車から地元の利用者が下車、照らされた紫陽花に目を向けるわけでもなく、霧雨の中イソイソと家路を急いだ。


 その下り列車が宮ノ下を発車、すぐに待ち受ける急勾配を一気に駆け上がる。闇夜と言うだけでなく濃霧に巻かれすぐにその姿を消す。列車の存在を示すのは勾配に挑む動力音だけ...


 宮ノ下駅は結構古い木造駅舎。もちろん窓枠は木製で開けるのにも少々力がいる。その窓には「あじさい電車」を売りにした沿線宿の宿泊プランが掲出されている。窓越しにライトアップされた紫陽花を望む。


宮ノ下を後にし大平台へ戻る。乗ってきた列車を見送りまた車で移動する。列車が去ったあとの駅は物凄く静かになる。


 帰りがけの駄賃?この日最初の撮影をしたポイントに立ち寄る。丁度よく、出山信号所に小田原行き列車が到着。真っ暗な山肌に列車の灯りが煌々と灯る。


その列車が出山鉄橋を渡る。窓明かりが周囲の緑を映えさせる。ボヤッと見える霧がこの山の深さを象徴する。


                                     

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