し ら さ ぎ 号  里 帰 り


 平成17年8月6日(土)、30余年の時を経て「しらさぎ」が加賀・山中へ里帰りする日が来た。7月28日の終電後に新金谷へ輸送され、車体の洗浄・一部機器の取り外しなどを行い、8月4日に搬出場所である大代川側線へ輸送されこの日を待った。

 8月6日(土)朝7時、大代川側線に着くとそこには「しらさぎ」の姿があった。大代川側線に運用離脱した車両が着くと言うと廃車解体が前提とされてきた過去があるだけに里帰りを知らない人が見ると「これも解体か」と思われるかも知れない。しかしこの車両に限ってはそうならなかった。

 7:50 駿遠レッカーのラフタークレーンが到着、車体吊幅に合わせて微妙な位置調整を行なう。この会社は大井川へ輸送された車両の大半を扱っているだけにここでの作業は手馴れたものだろう。


 8:00 車体運搬用の台車を積載したトレーラーが2台到着、すぐさま荷卸を行い車体の吊り上げ準備に取り掛かる。 
 8:45 一通りの準備が整うと作業員が集まり工程確認・安全確認が行なわれいよいよ作業開始となる。


 10:00 車体吊り上げ作業が開始される。2台のクレーンが協調し車体下に回された吊具を徐々に上げて微調整をしていく。
 10:33 吊具の微調整を何度も行いながらこの時間になりやっと車体が浮き上がった。


 10:35 台車から切り離された車体が徐々に高度を増し吊り上げられていく。


 2台のクレーンが無線でやり取りを伝え合い線路上から少しずつ角度を変えていく。


 仮設の架台に一端車体を下ろし運搬台車との接合金具を取り付ける。吊られているとは言え、重量級の車体下での作業は怖いだろう。手早くそして慎重に金具を取り付けていく。


 金具の取り付けが済むと架台を取り外し運搬台車を入れ込む。前輪は牽引車が、後輪は小型エンジンが付いているようで、自走で車体下に入る。位置の微調整を行ないながら寸分の狂いもなく台車上に車体が降ろされる。その様子を大鉄職員も遠目で見守る。


 午前中にモハ6011が、そして昼食を挟んで午後にクハ6061が運搬台車に載せられ、その後15時半頃から台車がトレーラーへ移された。1台のトレーラーに1両分の台車と機器類が載せられていた。


静岡で見る最後の青空、晴々とした暑い一日、「しらさぎ」の旅立ちに相応しい日になった。


 最後に車体から外され化粧直しされたパンタグラフ(PS13)がトラックから吊り上げられトレーラーに載せられた。そして車体には夜間輸送に備え、赤色灯が巻かれていく。あとは貫通路をシートを覆えば準備完了だ。


夕刻迫る大代川側線、アルミ車体に夕陽が照りだす。金谷で浴びる夕陽は今日が最後。製造から42年、その輝きは守られている。


20:50 昼間の騒々しさが嘘の様に静かな大代川側線。そこに佇む2両の車両。


大井川の対岸、島田の街灯りが妙に白々しく感じられる。


 22:45 牽引車のエンジンがかかり、赤色灯が灯火する。誘導車・警戒表示板を積載したトラックが揃い、輸送に携わる職員が最終打ち合わせを行なう。超特貨物輸送の規制で23時からの輸送となるようだ。


静かだった大代川側線界隈が数台の車のエンジン音で騒々しくなる。加賀・山中まで3夜に渡る輸送がこれから始まる。


 23:30 大井川の堤防をゆっくりと進んできたトレーラーは誘導員の誘導により旧国道1号線へ左折。通行車両を止め交差点を目一杯使って切り回す。切り替えして出るのかと思いきや、一発で曲がってきた。最初に運ばれたのはモハ6011。


信号が変わってしまったが、車線に戻るまで車の通行は出来ない。ものの1分も掛からず交差点を曲がり、一路加賀を目指す。


 道路上を列車が行く。TVなどでは見ることはあるが、実際に運ばれていく姿を見るのは初めての事。突然巨体が姿を現し、通行車両の運転手も驚いたことだろう。


 旧国道1号線から473号線へ右折、そして国道1号バイパスへ大代インターから入り西へ向かう。素人目には全長18.8mの車体に牽引車を含め21mほどの車両が曲がれるのか?と疑問に思っていたが、いとも簡単に曲がっていった。

 この後、クハ6061が大代インターからバイパスに入り、金谷を出たのは0時近くであった。
7日未明にどこまで運ばれたのか不明だが、8日には敦賀港まで運ばれ9日未明に山中町の保存場所である「道の駅 山中温泉ゆけむり健康村」へ無事に到着したそうである。

 里帰りが実現した「しらさぎ」今後とも末永く大切に保存してほしいものである。


 しらさぎが加賀へ旅立った翌日の7日より21日まで、新金谷駅前プラザロコにおいて有志14名の出展による「里帰り記念 しらさぎ号 写真展」を開催致しております。前照灯改造前のオリジナルスタイルから末期の姿まで47点が展示されております。期間中に大井川鐵道を訪れる方がいらっしゃいましたら是非お立ち寄り下さい。
 また、写真は展示終了後、大井川鐵道での活躍の記録として山中町へ寄贈させて頂く事となっております。
 写真展開催において、ご協力頂きました皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。


                                 
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