伊豆急行リゾート21 1次車引退イベント


 昭和60年、当時の鉄道車両の概念を一掃し奇抜なデザイン・車体構成でデビューした伊豆急行リゾート21こと2100系。運転席後方を開放した階段状の展望席や海側に向けられたシート・左右非対称の窓配置や塗装、車両設計に諸々の逸話を残す地方鉄道の車両らしからぬ洗練されたスタイルの普通旅客用車両が登場後21年の年月を走り通し、この春引退を迎える。
 登場翌年には鉄道友の会の「ブルーリボン賞」を受賞。この年に登場した2次車は東急線でのデモ運転を行なった。そして昭和63年登場の3次車は足回りから全てが新製され、東海道線乗り入れに必要な設備を搭載のうえ、この年のGWに東海道線東京駅への乗り入れを果たす。一地方私鉄の車両が東海道線東京駅へ乗り入れるなど、国鉄時代では考えられない出来事であっただろう。これも民営化のお陰であろうか。
 そして平成2年の4次車(リゾート21EX)・平成5年の5次車(アルファリゾート)と進化し、現在は伊豆急線・伊東線の普通旅客列車のほか、週末やシーズンを中心に東京乗り入れの特急列車として運行されている。

 登場時から鉄道ファンをはじめ、一般旅客・観光客にも大人気となり、この列車に乗るために列車をやり過ごす姿が見られたり、旅行社がこの列車に乗るツアーを企画するなど、東伊豆観光へも大きな影響を与えた車両でもある。そんな経歴をもつ車両も登場後21年、足回りなど一部機器を旧来の車両から転用している事もあり、老朽化が進み遂に引退を迎えることとなった。
 3月12日(日)、引退を記念した臨時快速列車が運行され、その後、伊豆高原の車庫で撮影会が行なわれた。その一日の様子を撮影してきた。


 12日(日)9:32 回104列車で伊東駅3番線に入線する伊豆急2100系(リゾート21)1次車。その前頭部には、この列車専用のヘッドマークが取り付けられている。登場後21年経つとは思えない洗練されたスタイルだ。


 伊東駅3番線には列車を待つファン・マニアが大勢カメラを向ける。自分が伊東駅に着いた9時頃には、既に1号車の乗車位置付近に10数人のファンが展望席を確保すべく待っていた。20年ほど前、観光客から向けられたカメラはファンへと変わり、最期の一枚をおさめる。


 伊東9:50発の臨時快速列車「さよならリゾート21 1次車」号。桜をあしらった専用ヘッドマークを掲げ最後の活躍。引退イベントの行なわれる11・12・18・19の4日間限定列車となる。


 伊東駅の発車案内表示器には臨時列車ではあるものの、しっかりと「快速」の文字が出ている。その列車をエスコートするのは今では当たり前と言うほど増えた女性運転士。鉄道乗務員に女性を多用した先駆け的存在でもある伊豆急行。現在でも多数の乗務員が活躍している。


 2004年(平成16年)に下田開港150周年を記念して黒船を模して黒地に赤帯の塗装に変更され、車内で下田開港当時の資料を展示した「黒船電車」としてリニューアルされた1次車。開港150周年イベント終了後も「黒船電車」としてそのまま活躍を続け引退を迎えることとなった。伊豆急行は開通時「第二の黒船」と言われ、東伊豆・下田に大きな影響を与えてきた。そんな事もあり、オリジナルに戻すことなく黒船で引退するのも良いかも知れない。


 デビューは1985年(昭和60年)、車両メーカーである東急車輛と伊豆急行の車両担当者が日々侃々諤々と意見を交え、今までの鉄道車両にない車両が出来上がった。そんなリゾート21は、翌年の1986年に鉄道友の会のブルーリボン賞を受賞した。車内にはそのプレートが掲げられている。


 小田急ロマンスカー・名鉄パノラマカーと前面展望を売りにした特急列車は以前から存在していた。しかし、運転台は2階へ上げられそこで繰り広げられる一挙一動を垣間見る事は出来なかった。リゾート21は階段状の展望席を設け、普通列車ながら24名の定員制としてその空間を開放した。
「運転士しか見られない光景を開放する。」この光景、採用当時は社内でも異論を唱える方が多かったのは言うまでもない。それを乗り越え、鉄道趣味人のみならず一般利用者からも好評を博し、現在では多くの鉄道会社・路線でも採用されるに至っている。一地方鉄道が鉄道業界に与えた影響はかなり大きなものだっただろう。


 伊豆高原で上り列車との交換待ち。下車して遊びに行く親子連れも珍しい列車に乗れた事で大喜び。車内や外観など、子供より親の方が懸命にその姿を記録していた。


 伊豆高原を出て、伊豆熱川・伊豆稲取・河津・蓮台寺と停車し、終点の伊豆急下田へ到着。すぐさま前面ガラスの清掃が行なわれ上り列車の運行に備える。前面展望が売りでもあるリゾート21、終端での清掃がその価値を高める。
 伊豆急下田の発車案内器には列車名表示もなされていた。


 中間車の車内、画面左側が海側となる。左右で窓の形状が異なるのがよく判るだろう。そして海側を向いた3人掛けシートが目を引く。単純なボックスシートや窓に背を向ける形のロングシートが鉄道車両の座席と言う概念を打ち砕き窓に向かってシートを配置。車窓に広がる光景をより楽しみやすく設計された。これも初めての試みであろう。


伊豆急下田発は11:28。改札後、担当運転士さんはファンや乗客サービスで列車と共に記念撮影に応える。


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