最後の東京口寝台特急で行く九州の旅


 駅撮りをして次に乗る列車の時間までの間に昼食を。時間があれば黒龍紅さんか黒亭さん辺りへ行こうかと思ったのですが、小一時間しかないので駅舎建物内にある「まるうまラーメン」で熊本ラーメンを食す。トンコツベースのスープに太麺、濃厚だけど博多ラーメンの様な油っぽさが少ない。スープが麺によく絡んでまずまずのお味でございました。


 駅前で食事をしたので、空き時間が少し...。駅前で市電や路線バスを撮りながら時間を潰すことに。熊本県下全域に路線を持つ九州産交を筆頭に、熊本市営バス熊本電鉄熊本バスの4社が競合している。駅周辺よりも市中心部にある交通センター付近では引っ切り無しに各社のバスが発着する。


 12:52発のリレーつばめ43号が入線。JR九州の車輌陣は日本離れした独特のスタイルに車内サービスの充実で好評を博している。このリレーつばめにはグリーン個室やハイパーシートなどグレードの高い客室も用意されている。


 熊本では車掌の交代が見られた。客室乗務員の洗練されたサービスと接客は定評だが、他の乗務員も教育が行き届いていて、満足度の高い列車の旅を演出している。これは全国各社の旅客鉄道のみならず、サービスに携わる業界に見習ってほしいほどのものだ。


 リレーつばめ43号が発車して暫くすると、乗車する「特急くまがわ3号」が車両センターから回送されてくる。使用される車両はキハ185系2両編成。九州横断特急と共通使用されているため、前面の表記はそのままである。


 全国で初めて特急列車でありながらワンマン仕様となった「九州横断特急」と「くまがわ」だが、客室乗務員が乗車して検札や車内販売、沿線案内などを行う。唯一「くまがわ」の名称が確認されたのは側面行き先幕だけ。
 車内は木目を基調とした落ち着いた内装。登場から20年以上経過している割にはリニューアルが施されて古さを感じさせない。


 熊本を13:07に発車し人吉まで1時間半ほど。途中の八代では側線に肥薩線で運用されるキハ40と、第三セクター「肥薩おれんじ鉄道」の気動車が留置されていた。JRと民鉄の車両が並んで留置されているのも珍しい。

 13:50、坂本駅で別府行きの九州横断特急6号と離合。人吉から別府まで豊肥本線を経由して4時間半以上かけて走る長距離特急。これから日本三大急流の一つ、球磨川に沿って走る。

 坂本を発車して鎌瀬駅を通過したところで明治41年に完成した全長205mの第一球磨川橋梁を通過する。トランケート式橋梁は日本でこの球磨川泰一橋梁と第二橋梁の2本しかない貴重な存在。


 14:39、定刻に人吉駅に到着。傍らに見える小型の気動車は「くま川鉄道」の軽快気動車。
 人吉は九州山地に囲まれた人吉盆地に位置し、鹿児島本線が海側で開通するまでは、肥薩線が鹿児島本線であった事から交通の要衝にもなっていた土地で、古くは鎌倉時代に相良氏がおさめていた城下町。
 現在では人吉温泉や球磨川下りなどの観光や焼酎の醸造業が盛ん。
ここから、肥薩線経由で吉松・鹿児島方面へは日に5往復しかない。そして、さらに球磨川に沿って湯前町までを結ぶ「くま川鉄道」が1時間に1本程度の列車を運行している。

 湯前へ向かう計画ではあるが、特急列車との接続が悪く、次の列車は15:28発。待ち時間が勿体無いので、14:52発の九州産交の路線バスに乗って湯前へ向かう事に。


 15:43、湯前駅前に到着した産交バス。この時間に運行されたバスは乗客19人乗りの小型車。どこぞの旅館・ホテルの送迎車クラスの車で、全線乗り通した乗客は自分一人だけだった。

 くま川鉄道の湯前駅舎は国鉄湯前線時代の建物のまま。木造の味わいある駅舎が今も現役で使われている。


 湯前駅から徒歩で10分ほど、球磨焼酎の醸造蔵の一つ「豊永酒造」に着く。「球磨焼酎」は世界貿易機関のTRIPS協定に基づく産地表示の保護指定を受けていると共に、2006年には地域団体商標として登録されている。ウィスキーの世界では産地の名を冠する事が当たり前に行われているが、焼酎の世界では球磨が唯一になる。

 球磨焼酎醸造元28蔵の中から、この豊永酒造を訪れたのは、全てにおいて球磨に拘る姿勢、原料の米や土から拘った造りをしている唯一の蔵であるから。その拘りをこの目で確かめたかったのである。


 豊永酒造は明治27年創業の焼酎蔵。大正8年に作られた石室で麹作りを行っている。「球磨の米、球磨の水、球磨に根ざした人による焼酎」を球磨焼酎の定義と位置づけ、原料である米はEM自然農法を実践している地元球磨の16軒の契約農家と、自社農園で作った有機自然米(3年以上無農薬・無化学肥料・オーガニック認証協会認証米)を用い、球磨川の伏流水で仕込みを行っている。


 30kgの米を水の勢いだけで3分間の洗米作業を行う。この水も全て自家井戸の球磨川の伏流水。洗われた米はポンプで次の作業に送られる。代表社員の豊永さんの他、3人の蔵人だけで全ての仕込みが行われているが、なかでもこの二人はまだまだ若い。球磨の蔵では若い人達が多く活躍しているという。


 ポンプで吸い上げられた米は水と分離されて大きな網の中へ入れられる。契約農家それぞれで米の状態が変わるため、農家毎に洗米を行い、210kg単位で浸水させられる。浸水前にサンプルをとり、何分浸けるかをその都度決めている。細かいところまで拘って最良の状態を維持している様子が伺える。


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