神尾崩落、奮闘を続ける大井川鐡道


 平成15年8月16日夕方から翌未明にかけて、大井川鐡道神尾駅南端が巨石・土砂の崩落により不通となった。幸い前日からの大雨を受けて現場付近は25km/hの徐行運転となっており接近した列車は直前で停止することが出来たため、人的・車輌の被害も出ずに済んだが災害規模は近年稀に見ぬほどの規模となっていた。
 夏の観光シーズン真っ只中に起きたこの事故はSLを運行出来ない事態となり、鉄道営業に大きな損害を与えただけではなく、沿線川根三町の観光・宿泊にも大きなつめ跡を付ける結果となった。
 この事故の影響で金谷〜福用間はバス代行となり、この区間にSLはおろか電車すら走らない結果となった。

 さらに今年は静岡国体開催の年、本川根町では長島ダム湖・八木の2箇所でカヌー競技が行われると共に、千頭駅にて聖火の採火をSLの火から行うという予定が組まれていた。最悪でもこれに間に合わすべく復旧工事が開始されたが、8月27日に再度崩落が起こり現状の土砂を取り除いていく方式では上部の国道にも影響を及ぼすとされ中断された。
 結果、6日の仮復旧は絶望的となり、国体の聖火採火式には誠に残念ではあるが新金谷で起こした火を千頭へ運んで行う事となった。

 そして9月、関係機関との調整を経て復旧工事が再開されると共にSLと客車を家山まで陸送し家山〜千頭間でSL列車を運行すべく輸送計画を申請。しかし、橋梁の重量制限などの問題からこの計画は却下。新たな方法でSL列車運転再開への足がかりをつけようと大井川鐡道は今、奮闘している。
 そんな奮闘を続ける大井川に9月2日訪れてみた。SL列車の走らない大井川鐡道の姿、観光鉄道から一変、極普通のローカル私鉄であった。


 
 9月2日午前6時25分過ぎ、2列車(上り1番列車)の到着を待つ代行バスが福用駅前に着く。

 代行バスへの誘導と場内入れ替えの為に普段は無人の福用駅に常時2名の駅員が配置された。

 崩落後、電車ダイヤは臨時ダイヤとなり福用〜千頭間を電車、金谷〜福用間をバスによる代行輸送をする措置を取った。

 福用駅の信号扱いは手動化され、駅員がその都度取り扱いを行う。

 そして各駅には代行バスの運行を知らせる張り紙がなされていた。

 現時点で予定されている来月10日前後の仮復旧まで当分この措置が取られることとなる。

 6:29 2列車が到着するとホームから乗客が代行バスへと乗り換える。狭い乗降口に列を成し約45名ほどの乗客を乗せて発車する。始発列車はまだ余裕があるが、4列車・6列車となるとこうは行かないだろう...


 2列車の折り返しが1列車を担当する、本来金谷からの始発列車となる1列車への代行バス接続はなく、福用からの乗客2人を乗せて千頭へ向かった。ワンマン化以来、福用で後部車輌のドアが開くのは稀。ワンマン運転時の停止位置に合わせて止めた為に一番後ろのドアはスロープに掛かっていた。
 次に着く4列車は通学利用が最大となる列車、福用の子供達はその列車を待たずに代行バスに...。


 やがてもう1台のバスが着く。1両当たり50人程度を見込んでの配車だと聞いたが次の4列車はそんなもんではないだろう。
やがて6:59着の4列車がホームに着く。何と今や大鉄一輸送力の小さい313Fを4列車に充当している!この車輌、予備車扱いで千頭に留置されていたのが功を奏し現在の運行を満たす事となった。老体に鞭打って大勢の乗客を乗せてきた。


 すし詰め状態の列車から開放された乗客が一気にホームを埋め尽くしやがて消えてゆく。学生は新金谷・金谷と分散し下車するのでこれだけの学生が一気に降車する姿を目の当たりに出来るのは皮肉にも代行バスに乗り換える今の福用だけである。普段ならあと20分ほど車内で寝ていられる学生の眠そうな表情が印象的だった。


 2台の代行バスを以っても立ち席が出るほどの乗客数。前日が始業式であった為普段の乗客数でなかった様で配車もその数に合わせてされた。
座れたら儲けもの、地蔵峠を立ち席で越えるのは...かなりキツイであろう。


 予想通り代行バスに乗り切れない乗客が数人。しかし駅員に詰め寄り文句を言う者などいません。「次のバスを待って学校には駅で証明もらえば大丈夫だから」と言われ大池商店のベンチに座り勉強をはじめる子達。新学期早々にテストがあるのだと。駅前でノートを広げる姿、都心では絶対見られない光景でしょう。


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