快 晴 ・ 富 士 の 裾 野 の 日 常 鉄 路


 2月14日(火)の深夜1時過ぎ、岳南鉄道の終点である岳南江ノ尾に着いた。終電後一時間もしないで消灯されるところが多い地方私鉄の中で、ここは煌々と灯りを点したままであった。7000系と8000系が並び夜が明けるのを待つ。


 駅照明だけでなく信号などの設備も灯火されたまま。ステンレスの車体に信号の赤灯が映える。そして空を見上げれば雲j一つない星空が広がり、満月がひと際明るく照らし続ける。冬の透き通った空、空気も深々と冷え込む。


 駅後方の工場は深夜にも関わらず明るい照明が点されて夜間も操業していることを窺わせる。一方、駅脇の工場は静まり返り、新幹線も走らない時間帯でここだけが静寂に包まれる。乗務員は駅泊ではなく帰宅している様で駅に人の気配はない。


 岳南鉄道の始発は6:12と比較的遅い。2番線から8000系「ガクちゃん」が発車、2番列車となる1番線の車両のパンタが上がる頃、満月がそのパンタの向こうにあるのに気が付く。6:37、発車ベルも鳴らずに数人の乗客を乗せて静かに発車していく。


 吉原からの始発列車が到着した頃、東の空から朝陽が顔を出す。ワンマン運転用の後方確認ミラーは夜露で真っ白になり見えなくなっている。陽が昇りその赤々とした姿を映しこむ。冷え切った空気が徐々に温まりだす。


7:10、2往復目の運用をこなす「岳ちゃん」こと8000系、岳南鉄道唯一の2両編成で通勤通学時間帯の需要に応える。


 7時半前、すっかり陽も昇り、清々しい空気が辺りを包む。快晴に恵まれたこの日、霊峰富士の姿も全山を望めるほどスッキリと見える。その富士山を車窓に眺めながら列車は走る。


 須津駅構内には花壇が設けられ地域の方々が季節の花を育てている。大井川鐵道でもそうだが、こうして地域と鉄道が蜜に繋がっているのが地方の嬉しいところ。無人駅でも荒廃しないのも地域の方々のおかげでもある。


 8:15、通勤通学時間帯も過ぎ、平日のノンビリした空気が流れる比奈駅構内。入換え業務をこなすED402もパンタを降ろして待機している。8時半を過ぎるとコンプレッサーの回る音が聞こえ機関車が始動、まもなく入換えが開始される。


 9:10過ぎ、一人の職員をデッキに乗せて岳南富士岡方面へ貨車数両を引き上げる。乗務員は意外と軽装だが、表で作業する職員は防寒着を身に纏っている。比較的暖かいこの日でも動く機関車に掴まっての移動は寒いだろう。


 転轍機付近で飛び降りた職員が列車を無線誘導する。ポイントを渡り終えて切り離し突放のタイミングを計る。突放での入換え作業が見られるのも岳南鉄道くらいとなってしまった。今後、対応出来る貨車が置き換えられていくとなると、この作業風景も見られなくなる。


 岳南鉄道沿線にお住まいのネット友Tさんにお会いし、白鳥が見られる川へ案内して頂いた。が、普段なら居る時間帯だと言うが早々に飛び立ってしまったようでその姿を見られなかった。時間を改めて出向くことにして再び岳南沿線へ移動する。移動中に富士山を正面に見る場所で新幹線を。珍しく?新幹線を撮ったりして...。ほんと、この日は富士が綺麗!


 岳南富士岡へ行ってみた。工場内には7001が入場し全検を受けている様子。廃車となった5000系と並んで501が休んでいる。ED40型が入場した際に構内入換えを担う大事なカマである。塗装の痛みが激しい5000系、その後に雪化粧した富士山が。いつもこの姿を眺めている。


ホーム端にブレーキシューでしょうか、磨きをかけられた状態で置いてあった。入場中の7000系のものなのか何なのか...


 比奈へ戻ると再び機関車が貨車の入換えを行なっていた。重々しい吊り掛けモーターの唸りが聞こえなくなったと思ったら旅客列車が到着。平日の日中、乗降もなく発車していった。


 11時半頃、吉原からED403が戻ってきた。設定では703レで貨車を牽いてくるようになっているが、この日は単機で戻ってED402の隣に並んだ。カラーが変わるだけで随分と印象が変わる。新塗装は岳南鉄道の貨物列車の荷主でもある大昭和製紙吉永(株)の広告が施されている。


 徐々に雲が出始めるが富士山に掛かる雲はまだない。704レで吉原へ向う貨物列車。コキ50000が含まれる編成が増える中、この日はワム80000オンリー。更新車が増え、オリジナルの茶塗装車がどんどんと減っている。


 白鳥が飛来する川へ再び行ってみた。14羽で群れをなして行動していると言う。正午前に戻ってきたそうで、あまり動くことなくユッタリとしている。飛び立つか飛び立たないのか...。毎日の様に来ている方も待ちぼうけ、なかなか飛び立たない。


 やがて富士山の上に雲が出始める。と同時に風が強く吹きつけるようになった。白鳥と言えば陸に上がってしまう始末...。「こりゃ今日は飛ばんな」とカメラを片付けて帰る人も。この後少し粘ってみたが...飛び立つ姿をカメラに収めるのは無理のようだ。


富士山の山頂に雲が掛かった。

明日は雨だなぁと言いながら帰っていく常連さん達の後を追うように白鳥の飛び立ちを諦め帰路についた。


                                  

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